経験談

「疲れやすい」を自分で理解するためには?相手に説明するには?

文:猪又 竜


4月に入り新しい環境での生活が始まった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回はHeartアンバサダーの猪又竜さんから「『疲れやすい』を自分で理解するためには?相手に説明するには?」というコラムを寄稿していだきました。
新生活にちょっとお疲れ気味の方、ぜひ参考にしてみてください。


※あくまで一患者の体験に基づいたものです。ご活用は個人のご判断でお願いします。

ほんの30年、40年前までは重度の先天性心疾患で生まれた赤ちゃんは大人になれませんでした。今では医療が進歩し90%以上(引用:成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版))の患者さんが大人になれる時代になりました。

大人になれるということは、働く患者さんが増えるということです。
ですので、成人した先天性心疾患患者のコミュニティでよく話題にあがることが「仕事」です。
さらにその仕事の話題の中で「疲れがたまってくると休暇をもらわないといけない」という、多くの患者さんが共感するテーマがあります。

私は完全大血管転位症を持って生まれ、今年で47歳になります。重度の先天性心疾患患者としてはパイオニア的な立ち位置ですので、たくさんの後輩患者から相談を受けます。
「疲れがたまってくる」という状態を、自分自身も理解して周囲の人にわかりやすく説明するにはどうしたらいいか考えてみました。
私自身もたびたび経験することなのですが、自分自身では十分休息をとりながら生活しているつもり、無理していないつもり、このくらいは問題ないと頭の中で思っているのに、不整脈が頻発したり、激しい倦怠感に見舞われたりする日があるのです。
これを健康な周囲の人に理解してもらうことって、言葉だけでは本当に難しいと思います。

そこで、下記のような説明資料を作ってみました。

頭で考えている疲れ具合と、病気の心臓の疲れ具合には差があるということです。先天性心疾患の心臓は正常とは違う構造で、外科手術でダメージを負っているので疲れ方が大きいと考えて良いと思います。自分自身も理解しやすいし、相手にも説明しやすい資料となっていると思いますので、ぜひご活用ください。印刷して職場にもっていってもOKです。仕事を学校活動に置き換えれば、担任の先生やお友達にも説明しやすいかもしれません。

先天性心疾患患者は「見た目ではわからない」ので、どういった病気なのか、どんなことができないのか(医師から止められているのか)、どういう配慮をしてほしいのか、すべて自分から発信しないといけない現実があります。これは実はすごくエネルギーが必要で、ストレスを感じます。面倒だと感じ、周囲の雰囲気(心理的安全性)によっては説明をしない・できない人もいるのではないでしょうか。

これからも、説明しやすい資料ができたら共有します。

最後に、私は医師と看護師と共にYoutubeチャンネル「Living with Heart ~みんなの生き方~」を運営しています。先天性心疾患患者さんの参考資料となるように、いろいろなテーマで患者さん自身が出演してくれています。ぜひご覧ください。

<この記事を書いた人>
with Heartプロジェクト Heartアンバサダー 猪又 竜
(完全大血管転位症・長野県教育委員会人権教育講師・長野県ヘルプマークディレクター・長野看護専門学校非常勤講師・SOMPOホールディングス株式会社)