経験談

わたしは誰かの心臓で生きています

文:徳永 晃

“わたしはあなたの心臓で生きています”
名も知らぬあなたのおかげで今を過ごす事が出来ています。
“ありがとう”

本当なら見ることのできなかった今日を、あなたのおかげで過ごすことが出来ています。

わたしは、心臓移植しか助かる見込みがないと言われる心臓病になり、人生を諦めかけ、”死んでしまう”というその思いに取りつかれ、つらい時、苦しい時、悲しい時、「なぜ自分だけ」「この世に神様はいないのか」まさに絶望の淵に立っていました。
そんな時、私の出会った医師から「医学は常に進歩している。生きてさえいればきっと何とかなる。だから長生きをしましょう。」と言われ、死ぬことばかり考えていた自分が「そうだ、死ぬ気で生きればいいんじゃないか」と発想が変わり、自分を信じ生きることに望みを持つことが出来ました。
それからは、ただただ、病気と正面から向き合い、ただただ、自分と向き合い過ごしてきました。
同じ病気でわたしよりも苦しそうな人もたくさん見てきました。「あの人よりは自分は楽な方」そう思い、懸命に生きました。それでも病気というやつは少しずつ進行し、体は弱っていきます。何度も検査し、投薬治療やICD(埋込型除細動器)、LVAD(補助人工心臓)などの機械も体に埋め込みました。感染症など別の病気になることを心配し、“ここまでか”とあきらめなければならない状況になった時、目の前にドナーが現れて命をつないでいただきました。それは奇跡のようでした。

わたしの中で心臓移植とは、「自分だけが元気になって新たな人生が始まる」「わたしが幸せになる」そう思っていましたが、そうではありませんでした。ここから二つの人生が一つになって、次の人生が始まるということなのです。あなたの心臓でわたし一人が生きているのではなく、あなたの心臓と共に、あなたとわたし、あなたの家族、わたしの家族、臓器提供に至るまでに関わって頂いたすべての方の新しい未来が共に始まるということです。
「感謝」と一言で言ってしまえばそれまでなのかもしれませんが、心の奥底まで染み込むような温かさに包まれているような気がします。

わたしは約束します。いつまでも共に歩んでいきます。いつまでもわたしの胸の中で過ごしてください。そしてもっともっと新しい世界を見ましょう。あなたとわたしが笑顔で居られることを沢山の人に知ってもらいましょう。
それがわたしのHeart storyです。

◆本コラムは、with Heartプロジェクトで開催したライティング講座を受講された方のコラムです

<この記事を書いた人>
当事者メンバー 徳永 晃